【松井奏主演 ミュージカル「アンコール!」考察】
ミュージカル「アンコール!」の大千穐楽から、早いもので3週間。
奏くんの記念すべき初主演ミュージカル。
初の外部舞台。初の座長。
ただただ楽しくて、幸せで、夢のような3週間でした。奏くん、改めて26公演、本当にお疲れ様でした💐
感想を綴ってしまったら、いよいよ本当に終わってしまうような気がして、「まだまだこの余韻の中に生きていたい…!」とついつい先延ばしにしていましたが、もうすでにあの日々が遥か昔のことのように思えてしまい…。記憶の新しいうちにしっかりと書き留めておかねば!と思い、筆を取りました。
まず1つ目の投稿は「アンコール!」の「考察」から。
90分というコンパクトな作品でありながら、本当いろんなことを考えさせてくれたミュージカル「アンコール!」。その中でも、今回観劇する中で、私が特に感じた2つのことを書きたいと思います。
「アンコール!」の世界に生きるカミトと「アンコール!」の舞台に立つ奏くん
まずは、カミトと奏くん、2人の人物について。
全然違う2人なのに、個人的には似ているところや重なるところがたくさんあるなぁと思っていて。
奏くん自身も、舞台が始まる前は「(カミトは自分と)結構真逆!ドキドキしてる!」と言ってたのに、終わった後は「カミト割と奏なんだけど(笑)」なんて言っていて。本人も演じていく中で、初めは自分と正反対だと思っていたカミトに、重なるところや、近いものを感じたのかな?なんて思った。
スターゆえの葛藤・苦悩
劇中で、スターとしての生活に嫌気が差したカミトが「(自分の顔なんて)毎日毎日嫌ってほど見てるよ!」「分刻みのスケジュールで取材があって」「こんな変装までさせられて」と言うセリフがあるんだけど、それがまるで現実の奏くんに重なって聞こえるような気がしてならなくて。
実際のことは何も知り得ないし、単なる想像でしかないけど、でもきっと、私たちが当たり前に送っている日常が、彼ら(カミトや奏くん)にとって当たり前でないことは確かで。
幼い頃からジャニーズとして活動をしてきた奏くんにとって、そんなカミトの葛藤や苦悩を直感的に理解して寄り添うことは、まったく難しいことではないんだろうなと思った。
でも、奏くんの活躍を見ていて、「不安そうだな」とか「辛いこともあるんだろうな」と思うことはほとんどなくて(時々、私の個人的な感情を重ねてしまうことはあるけど)。でもそれはきっと、奏くんがいつだってプロのアイドルだからで。そしてもし彼が、そういう不安や辛さを見せてくれることがあったとしても、それは「見せる」ためにコーティングされた「アイドルとしての一面」でしかなくて。
真髄に触れられないもどかしさを感じつつも、いつだって美しく在り続けてくれる奏くんがいて、それを直に感じることができるのは、もうそれだけで十分ファン冥利に尽きるよなぁなんて、カミトの苦悩や葛藤に触れながらぼんやり思ったりした。
奏くんが歩んできた道とカミトが歩んできた道がこの作品で1つになって、そしてまたそれぞれの道に分かれていくような、そんな自然なつながりを感じさせる2人だった。
カミトと奏くんの思いが重なり合った歌詞
物語本編のラスト、カミトが再びステージに立って歌う「カミト sing for an encore」。
大阪の大千穐楽、この歌詞は確かに、「アンコール!」の世界に生きるカミトと「アンコール!」の舞台に立つ奏くん、2人の思いが完全にリンクしていたと思う。
「時に人は足掻く まだここにいたいと」
「時に人は求める 物語の続きを」
「いつか再び会う日まで」
「共にいるこの瞬間は かけがえない宝物」
感極まるあまり声が震えてしまって、でも懸命に歌おうとする奏くんの姿を見て、ああきっと、「アンコール!」がついにその「終わり」を迎えようとしていることを、奏くんが誰よりも理解していているんだなぁって。奏くんが見せてくれたあの綺麗な大粒の涙が、このミュージカルへの思いの全てを物語っていたと思う。
「嘘のような奇跡を
舞台でなら生きれると
まだ諦められない」
"まだ諦められない"
思いの丈をぶつけるかのように、全身全霊を込めて歌う奏くんに、どうしても、カミトの言葉に重ねられた奏くんの思いを深読みせずにはいられなかった。
"嘘のような奇跡"
そんな奇跡が起きる未来を信じて。
カミトの心情の変化と音楽の伏線
続いては音楽の話を!
ミュージカル「アンコール!」、どの楽曲も一度聴いたらすぐに口ずさめてしまうような、そんなピュアな音楽がとっても魅力的だったんだけど、特に、ミュージシャンであるカミトの心情の変化を、音楽の要素から描いているのがすごく粋で。
まるで、音楽で物語の伏線を描いてるみたいだなぁなんて感じた。
ディーヴァたちの旋律
カミトの声が出なくなってしまったシーンで歌われる「カミト is lost」。
この曲の中でアミ・ユナ・ソラのダミー(厳密には彼女たちはまだ役として登場していない)がそれぞれ歌う旋律は、カミトを追い詰め、彼の歌声を奪ってしまう。
この旋律は、のちにカミトが彼女たち1人ひとりに歌の個人指導をするシーンで再び現れる。
カミトは歌の指導をしながら、アミ・ユナ・ソラ、3人が抱える問題に1つひとつ向き合い、彼女たちをそれぞれの苦しみから解放する。
こうして「自分らしさ」を手に入れた3人は、それぞれがこの旋律に思いを乗せ、素晴らしいハーモニーを生み出していく。
かつてカミトを追い詰め、苦しめた旋律が、今度はカミトが彼女たちを救う旋律として現れている。
さらに、カミトが彼女たち「トライアングル」のことを「ディーヴァ(女神)」と呼んだように、最終的にカミトは「トライアングル」、すなわち「この旋律を司るアミ・ユナ・ソラ」から再び歌う勇気をもらっている。つまり、かつてカミトから声を奪った旋律は、巡り巡って、再びカミトの歌声を取り戻す旋律として現れる。
こうやって多彩に変化しながら、カミトの心情の変化を描いたディーヴァたちの旋律。
音楽に生きるカミトの心情が、音楽によって描かれているところが、とても素敵な仕掛けだなぁと思った。
「アンコール」の意味
このミュージカルのタイトルでもあり、物語の中でも重要な意味を持つ「アンコール」。
カミトはワールドツアーの最終日、アンコールに応えるためにステージに上がるも、突然歌を歌うことができなくなってしまう。
その時のカミトにとって、この「アンコール」は、「もう一度歌え」という手拍子でしかなくて。
でも、ユウトやアミ・ユナ・ソラ、そして月光町の人たちと共に時間を過ごしていく中で、「ただ自分だけのために歌う歌」ではなく「誰かのために歌う歌」を歌うことを思い出し、次第にカミトにとって「アンコール」は「もう一度会おう」と「呼ぶ声」に変わっていく。
"本当にそんな意味なのか"
絶望していたカミトが見つけた、「アンコール」の本当の意味。でもまだまだ "これからが新しい旅立ち"。
"本当はどんな意味なのか"
舞台は幕を閉じるけど、でも、物語は終わらない。
カミトはこれからもステージに立ち続け、その答えを探し続ける。
現実を生きる私たちと、「アンコール!」の世界を生きる彼ら。舞台が終わってしまったら、もう記憶の中でしか会うことはできないけど、彼らにはまだまだ旅の続きがあって、それと同じように、私たちの旅も続く。
本当は少し寂しいけど、
でもきっと "いつか再び会う日まで"
"ありがとう「アンコール!」"